いちばん

どの季節がすきかと聞かれたら、「冬が好き」と他人には言う。世の中には「春を待つ」という文句があふれてすぎていて、どいつもこいつも来る春にばかり目を向けて、冬にちゃんと関わろうとしない。そんな冬が不憫で仕方なくて、でも僕がいちばんすきな季節は秋だ
小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』という本の冒頭にちょっとしたチェスの駒の紹介があって、

  • ポーン…決して後退しない、小さな勇者。

という文句をみつけたとき、洋子さんも、僕が遠くから見ているような者たちを愛しているのだと解った。でも書名に冠したのは『象』。ビショップ。